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頚椎椎間板ヘルニア
質問と回答
頚椎椎間板ヘルニアとはどんな病気ですか?
椎間板ヘルニアと言えば腰のイメージが強いですが、首の骨である「頚椎」にも椎間板は存在し、もちろんヘルニアにもなります。
頚椎椎間板ヘルニアとは7つある頚椎、その間をつなぐクッションである椎間板の中に存在する髄核というゲル状の組織が、外に飛び出してしまった状態です。
飛び出したヘルニアが神経を圧迫することで様々な症状を引き起こします。加齢による変性、姿勢不良、激しい運動などによる負担が椎間板にかかることで発症します。
頚椎椎間板ヘルニアにはどうしてなってしまうの?
頚椎椎間板ヘルニアも腰椎の場合と同じく、椎間板への圧力が主な原因となります。非常に可動性が大きい部位であること、構造上腰椎よりも外からの負担に弱いことなどから、腰椎とは違い、重いものを持ったりすることが直接の負担とはなりにくいですが、姿勢や外力の影響を大きく受けると言えます。そのためラグビーなどのコンタクトスポーツ選手にも多く見られます。その他、喫煙や遺伝なども発症に関わると言われています。
頚椎椎間板ヘルニアの症状にはどんなものがあるの?
軽度の場合、首の痛み、肩こり、軽い手のしびれなどを訴えます。徐々に首を反らす動きが制限されるようになり、腕や手に痛みが走るようになります。重症化してくると手や腕の感覚が無くなったり、握力を始め筋力が低下してきます。手先を使う作業が上手くできなくなり、場合によっては下半身にも症状が出現します。あとは膀胱直腸障害と言って尿や便が出にくくなったり、逆に頻尿や失禁がみられることもあります。
重症例では早期の治療が非常に重要ですので、注意が必要です。
頚椎椎間板ヘルニアはどんな人がなりやすいですか?
当院での男女比は約3:1で男性に多く、20代から70代まで各年齢層の方が手術を受けており、男女とも働き盛りの30~50代にピークがありました。
20代で頚椎椎間板ヘルニアになるのは、首を酷使する、格闘技の選手やラグビーの選手に多く見られます。
中年以降では、下から上ばかり見ている電線の仕事や、黒板を書く姿勢が良くないせいか、教師の方を何人か経験していますが、首に負担のない職業の方も多くいます。
頚椎椎間板ヘルニアの診断は?
発症の仕方(いつから、きっかけはあるか、他の病気はないか)、痛みの評価(どこが痛いか、いつ痛いか、どんな格好で痛いか)に加え、シビレがあるか、力は入るかなど、神経学的な所見を詳しく見ていきます。
さらにレントゲンなどの画像検査を行いますが、その中ではMRIが特に重要です。MRIは磁力を利用して身体の中を調べる検査で、神経や筋肉などの軟らかい組織を鮮明に写し出すため、ヘルニアの検査には必須と言えます。
他にも状態に応じてCT検査や、造影剤を注射する検査などが行われ、頚椎ヘルニアを診断します。一般に整形外科で行われるレントゲン検査のみでは診断を下すことができないため、検査設備が整った施設を受診しましょう。
頚椎椎間板ヘルニアの治療法はどんなものがありますか?
頚椎ヘルニアの治療は大きく「観血的療法」と「保存療法」とに分けられます。
観血的療法とは手術治療のことを指し、保存療法は、それ以外の投薬治療や注射、コルセットなどの装具療法、リハビリなどを指します。
保存療法は、ヘルニアによる神経の圧迫を直接取り除くわけではないので、どちらかと言えば痛みなどの症状に対する対処療法となります。激烈な症状や麻痺など重度のヘルニアである場合を除き、まずは保存療法を選択するのが一般的です。また、姿勢を整える、同じ姿勢を長く続けたり、重い物を持つなどの首に負担のかかることを避けるといった生活習慣の見直しも重要です。
頚椎椎間板ヘルニアの手術以外の治療にはどんなものがあるの?
手術以外の治療で多く行われているのは、注射、薬物療法、装具療法、リハビリぐらいでしょうか。
注射治療は痛みを感じる信号をブロックして、痛みを抑えます。薬物療法は、炎症を抑えたり、神経の働きを良くすることで症状を緩和します。装具療法は頚椎カラ―と呼ばれる固定具を利用して負担を軽減し、リハビリでは運動療法やストレッチ、各種物理療法(電気治療や超音波治療)を用いて筋力や柔軟性を改善して症状の緩和を目指します。
状態に応じてそれぞれを組み合わせて治療していきます。
頚椎椎間板ヘルニアの手術にはどんなものがありますか?
前方(喉側)から大きく切開して、椎間板と飛び出したヘルニアをすべて切り取り、椎骨同士を金属や骨移植で固定する手術「前方固定術」が長年、標準手術とされてきました。ただし、傷が大きくなることや、固定した上下の椎間板が悪くなることが問題になることがあり、最近ではそれを克服した、経皮的内視鏡を使う手術が行われています。
内視鏡で前方からヘルニアを摘出する手術や、後方から神経の圧迫を取り除く手術もあり、小さな傷で手術できるようになりました。
当院の頚椎椎間板ヘルニアの手術についてはこちら
頚椎椎間板ヘルニアに対する経皮的内視鏡の手術について
代表的な術式であるPECD(経皮的内視鏡下頚椎椎間板摘出術)は、まず首の前方から直径約4mmの金属製の筒を椎間板に挿入し、その中に内視鏡を入れて、神経を押しているヘルニアだけを取り除く手術です。 技術の進歩により、近年この手術が可能になりました。 傷は4mmほどで、まず細いはりを椎間板に刺入し、少しずつ丸い筒で押し広げながら、約4mmの筒を設置します。その中に内視鏡を入れて、画像を確認しながら、悪い部分だけを取り除く究極の最小侵襲手術です。すぐれた光学システム、極小機器、熟練した手術技術が必要です。
頚椎椎間板ヘルニアでは前側のヘルニアと後ろ側の骨に挟まれて、神経が傷害されます。そこで、上記で説明した方法以外に、後ろ側から骨を削り、神経の圧迫を取り除く方法もあります。神経の後方には骨と筋肉しかないので、気管、食道や大血管がある前方からの手術に比べ、安全性が高いのが特徴です。ヘルニアが硬く、とりにくい場合や、骨の変形が強い頚椎性神経根症などの場合は前方手術が難しいことがあり、後方内視鏡の手術で、安全に痛みを取ることができます。
親が頚椎椎間板ヘルニアで手術をしています。遺伝しますか?
椎間板は誰でも年齢とともに水分が減って弱ってきます。歯や目が年齢とともに弱くなるのと同じです。この椎間板の強弱には遺伝子との関連性も指摘されています。 また、脊髄が走る脊柱管には、広い・狭いがあり、狭い人は小さなヘルニアでも症状が出やすく、広いと神経の逃げ道があり、症状は出にくくなります。
椎間板の丈夫さと脊柱管の大きさは、生まれ持った遺伝子の影響を受ける場合もあり、親がなった場合はなりやすい可能性はあります。ただし、必ずなるわけではなく、環境によるものが大きいと言えます。
頚椎ヘルニアを予防するにはどうすればいいの?
頚椎ヘルニアを予防するには、まず姿勢を改善することが重要です。人間の頭部は非常に重たいため、猫背などの姿勢が崩れた状態は頚椎に大きな負担がかかります。また、強く首を反らしたり、衝撃を与えることを避けるのも重要です。
そして、負担を減らすだけでなく、負担に耐え得る身体を作る事も大切です。柔軟性を上げたり、筋肉を鍛えたりすることがそれに当たります。一人ひとり状態や、置かれている環境は違いますので、自分に合ったヘルニア予防策を講じることが重要と言えます。