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心因性腰痛(ストレス性腰痛)
質問と回答
ストレスは腰痛の原因になりますか?

ストレスが腰痛の原因になることは昔から経験的にわかっていましたが、そのメカニズムが解明されてきたのは比較的最近のことです。
詳しいメカニズムは省きますが、長く続く強いストレスによって脳に変化が起こり、本来感じないはずの痛みを感じるようになってしまいます。
また、ストレスは身体をこわばらせることから、筋肉を緊張させ、その結果循環などが悪くなって痛みを引き起こすことなども考えられます。
心因性腰痛とは何ですか?

心因性腰痛とは、ストレスなどの心理的な負担が原因となって発症する腰痛のことを指す言葉で、国際的な流れから現在では「痛覚変調性疼痛」と呼ばれるようになりました。
痛みは大きく三つの種類に分けられます。
ぶつけたり骨が折れたりなどで起こる痛みを「侵害受容性疼痛」、神経が障害されて起こるジンジン・ビリビリとした痛みを「神経障害性疼痛」、そしてそれらのような異常がないにもかかわらず、脳の変化によって痛みが起こっている「痛覚変調性疼痛」です。
先ほど述べたように、痛覚変調性疼痛は元々「心因性疼痛」と呼ばれていたもので、前述のストレスによって起こる痛みもこの中に含まれます。
脳の機能が変化して起こる痛みであることから、レントゲンやMRIなどの画像検査で原因が特定されず、「原因不明の腰痛」として「痛がりなだけ」「精神的な問題」と片付けられてしまうことが多々あり、適切な治療が受けられないことなどがあります。
適切な治療を受けるためにはペインクリニックや痛みの治療経験が豊富な整形外科などを受診するのが良いでしょう。
心因性腰痛の見分け方を教えてください。

心因性腰痛ははっきりと診断することが難しく、いくつかの検査を組み合わせ、その結果から総合的に診断します。椎間板ヘルニアや圧迫骨折などの背骨の病気や、筋肉のこわばりなど、比較的診断がつきやすい痛みが無いかを調べ、それらが痛みの原因ではないことを確かめつつ、心理的な負担やいわゆるネガティブさを調べるテストなどを行い、総合的に診断されます。
例えば腰椎椎間板ヘルニアでは腰を曲げると痛むことが多く、脊柱管狭窄症などでは立ったり歩いていると症状が出てくることが多いとされていますが、心因性疼痛ではそういった一貫性が無いことが多く「よくわからないけどとにかくずっと痛い」といった訴えを聞くことがあります。また、痛み方も鋭い痛みや刺すような痛みであることは少ないとされています。ロキソニンなどに代表される通常の痛み止めの効果があまり見られないことなども診断に重要な情報となります。
先述のように、心因性疼痛(痛覚変調性疼痛)は原因不明の腰痛と扱われてしまうこともあるため、これらの検査や情報をもとに総合的に判断ができる医師の診断を受けることが大切です。
心因性腰痛にはどのような治療をするの?

心因性腰痛では、椎間板ヘルニアなどの病気のように痛みの原因がはっきりしているわけではありませんので、「手術でヘルニアを摘出すればOK」というようには行きません。
近年効果があると言われているのは「認知行動療法」と呼ばれる心理療法の一種です。不安やストレスを管理し、痛みに対する考え方や捉え方を変え「痛みを自己管理する=痛みとの上手い付き合い方を身に着ける」ことを目的としています。
また、運動も痛みに対する効果があることがわかっています。
運動内容はなんでも構いませんが、軽く息が上がる程度の有酸素運動、ウォーキングやエアロバイクを漕ぐなどが始めやすく、ある程度効果も実証されていることからお勧めです。
また、薬にもある程度の効果が報告されています。
ロキソニン®などの一般的な痛み止めは効果が少ないと言われており、抗うつ薬、抗てんかん薬、麻薬様など多様な種類の薬が使用されることがあり、これらには不調となった脳の機能を回復させ痛みを抑える効果があります。薬はあまり飲みたくないと仰る患者様もいらっしゃいますが、これらの薬は用法容量を守りながら使用すれば強い味方になってくれるものです。眠気やふらつきのような副作用が出ることもあるため、効果を判定しつつ、主治医と相談しながら量や薬の種類を決定していきます。
心因性疼痛に対しては上記のような治療法が行われることが一般的ですが、先述のように「コレをしたら良くなります!」という治療法がないことから歯がゆい思いをする患者様が多くいらっしゃいますが、逆に言えば骨や神経に異常があるわけではありませんから、あまり恐れ過ぎずにできることをやるという考え方が大切です。
精神的ストレスからくる腰痛によい市販薬はありますか?

市販されている痛み止め(バファリン®やイヴ®など)は心因性疼痛に対して比較的効果が少ないと言われており、効果がないために用法以上にたくさん飲んでしまうといったことをしてしまいがちです。また、効果がある程度報告されている薬は一般に市販されておらず、使用法にも注意が必要なものが多いため、ペインクリニックなどの痛みの専門医に相談した方が良いでしょう。
心因性腰痛に効くツボやマッサージはありますか?

心因性腰痛はストレスや精神的な負担などが原因となって起こる腰痛です。マッサージなどが効果を発揮するのは筋肉や関節の問題ですから、心因性腰痛に対するマッサージやツボ押しの効果は限定的だと考えられます。
ただ、先述のように、ストレスや精神的な負担によって筋肉を緊張させ、その結果循環などが悪くなって相乗的に痛みを引き起こしていることなども考えられますので、試してみること自体は問題ないと思います。マッサージなどの受け身的な治療に比べ、運動などの積極的な治療の方が効果が高いことはハッキリしていますので、マッサージやリラクセーションなどの受け身的な治療に関しては依存的になってしまわないことが大切です。
精神的なストレスから腰痛だけでなく背中の痛みや、下腹部が痛くなることなどはありますか?

精神的なストレスは腰痛のみならず首肩の痛みや背中、膝、お腹や胸の痛みなど、などあらゆる部位に痛みを引き起こすことがわかっています。また、長引く痛みは自律神経に対しても悪い影響を及ぼし、消化器系の不調を招いたり呼吸を浅くさせたりすることがあります。
日によって痛みが移動したり調子に大きなムラがあったりなど、一貫性が無くはっきりとしない痛みはストレスからくる痛みの特徴でもありますので、痛みの場所や強さなどに一喜一憂しないことが精神的な健康上大切だと思います。
心因性腰痛が悪化して歩行困難になることはありえますか?子どもや家庭のことなどで、かなりのストレスやプレッシャーがあったことは自覚しています。

ヘルニアなどのはっきりとした医学的な原因が見つからない心因性疼痛(痛覚変調性疼痛)と思われる患者さんで、10メートル程度を歩くことが難しい患者さんや、寝たきりに近い生活をしている患者さんなどを経験したことがあります。
生活に支障がない程度の痛みから、身体を起こすことも難しく感じるほどまで、心因性腰痛の程度は様々です。
精神的なストレスからくる腰痛を調べてもらうには病院の何科にかかればいいでしょうか。検査などはしてもらえるのでしょうか。

精神的なストレスによる痛みをはじめとした慢性的な痛みは、そのメカニズムが複雑であることから整形外科や内科、精神科、リハビリテーション科などがチームを組んで総合的に治療を行うこと「学際的な治療」が推奨されています。
中々そういった専門的な治療を受け難いため、ペインクリニックや整形外科、心療内科などを受診するのが良いのではないでしょうか。
ペインクリニックは痛みそのものを専門としており、精神的なストレスからくる痛みに対しても経験が豊富です。また、整形外科や精神科、心療内科でもそういった痛みに対応していることがありますが、医師によって経験や知識は様々です。
また、クリニックなどではMRIなどの検査機器を有していないことも多いことから、大学病院をはじめとした設備が充実した医療機関を受診するのも良いでしょう。またそのような多くの科が集まっている病院では、科をまたいでチームで治療を行うこともありますので、そういった施設が受診できるとより良い治療を受けられる可能性が高いと思います。
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