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半月板損傷

質問と回答

半月板損傷とはどんな病気ですか?どのような症状が出ますか?。

半月板損傷とは、膝関節にある「半月板」という軟骨の一部が傷ついたり、裂けたりすることを指します。半月板は膝関節において、骨同士が直接ぶつかり合うのを防ぎ、衝撃を吸収するクッションのような役割を持っています。半月板が損傷すると、その役割が果たせなくなり、痛みや動かし難さを感じたり、骨の変形を引き起こしたりします。

軽度の半月板損傷では、動き始めの痛みや、膝を深く曲げたり捻ったりした際の軽い痛みが生じますが、日常生活に大きな支障はありません。運動や長時間の歩行後に膝が疲れたような痛みを感じる場合もあります。膝を動かした際にコキッという音が鳴ることもあります。病状の進行に伴って膝の痛みが強くなり、階段の昇り降りやしゃがむ動作での痛みが増してきます。膝の引っかかりを訴えることがあり(膝のロッキング:別問を参照)、突然膝がしっかり伸びない、もしくは曲がらないといった症状が出現します。膝が腫れたり水が貯まったりするケースもあり、この段階になると日常生活にも支障をきたします。

半月板損傷が疑われる症状チェックリスト
・歩き始めなど、動作の開始時に痛みを感じる
・膝の痛みが運動や動作の後に強まる
・膝に「ひっかかり感」や「ガクガクする感じ」を感じる
・階段の昇り降りやしゃがむ際に膝の痛みが増す
・膝が腫れたり、動かしにくい状態が続く
・あぐらをかくと痛い

上記の症状が続く場合、半月板損傷の可能性があるため、医師に相談することをお勧めします。

半月板損傷の原因は何ですか?

半月板損傷の原因は、スポーツなどで膝を捻ったり、転倒によって強い衝撃が加わって急性に起こるものと、加齢や日常生活の負担によって徐々に進行するものがあります。
スポーツではサッカーやバスケットボール、スキーなど、急激な方向転換が要求されるスポーツで起こりやすいとされています。

半月板損傷になりました。治療法や治療期間を教えてください。

半月板損傷の治療法は、損傷の程度や症状によって異なります。手術療法と、それ以外の治療(保存療法)があり、軽度のものは保存療法で対応可能な場合もありますが、重度のものには手術が検討されます。

軽度な場合の治療法
治療:保存療法を基本とします。炎症が強い場合には安静、冷却(アイシング)、膝を圧迫するサポーターの使用や、抗炎症剤の服薬・注射などを行います。また、リハビリ(理学療法)として、膝周りの筋力強化や柔軟性を向上させるストレッチなどが行われます。数週間~3カ月程度で、痛みが改善してくることが多いですが、活動量やスポーツなどのライフスタイルによって、個人差が大きいと言えます。

中等度の半月板損傷の治療法
治療:保存療法で様子を見ることが多いですが、症状が改善しない場合や痛みが強い場合、生活に支障を来している場合などは手術が検討されます。保存療法で症状が改善することもありますが、多くは手術を行った方が早期に改善すると言えます。

重度の半月板損傷の治療法
治療:損傷が重度の場合、手術が選択されます。関節鏡(内視鏡)を用いて、半月板の損傷部分を切除・縫合する方法が一般的です。治療期間は手術後のリハビリを含めて3~6か月以上かかる場合があります。

適切な治療選択のためには、膝関節専門医の診療を受けることが大切です。

半月板の検査方法について教えてください。

半月板損傷の検査では、主にMRIやレントゲンといった画像診断が用いられます。

MRI(磁気共鳴画像):
半月板の損傷を詳しく確認するための検査方法で、軟骨や靭帯の状態を高精度に映し出します。半月板の損傷範囲や深さが確認でき、治療方針を決めるために必須の検査です。

レントゲン:
膝の骨の状態を確認するために使われます。レントゲン検査では半月板自体は映りませんが、骨のずれや変形、骨折の有無などが診断可能です。

医師の判断により、必要な検査が組み合わせて行われ、半月板損傷の有無や損傷の程度が診断されます。適切な治療選択のためには、適切な検査・診断が必要です。半月板損傷では、診断設備の整った医療機関を受診することが重要です。

半月板損傷になりました。どのようなリハビリをしますか?

半月板損傷のリハビリは、膝の筋力を強化して、膝の安定性を高め、膝にかかる負担を減らすことが目的となります。また、損傷によって膝の屈伸可動域が制限されることがあるため、それらを改善することも重要です。

膝関節のリハビリでは、大腿四頭筋と呼ばれる、太ももの前側の筋肉が特に大切です。また、膝以外にも、股関節や足関節、骨盤、背骨などが膝関節の負担と関連していることから、膝関節以外のコンディションを整えることも重要とされています。膝にかかる負担が小さいことから、自転車(エアロバイク)を使用したリハビリが行われることも多く、損傷の程度や個人の病状に応じて、リハビリのプログラムを決定していきます。医師や理学療法士の指導を受けながら、適切に進めることが大切です。

半月板損傷でやってはいけないことは?

半月板損傷では、膝を捻る動作や深く曲げる動作、ジャンプ動作など膝に過剰な負担がかかる行動を避けることが大切です。

急な方向転換やなどによって膝関節が捻られてしまうと、半月板への負担が大きくなり、損傷が悪化する恐れがあります。また、しゃがみ込みなどの深く曲げる動作やジャンプの着地などでは半月板に強い圧力がかかるため、避けるべきだとされています。日常生活の中で膝への負担を減らすことが、半月板損傷の治癒には重要です。これらに注意しながら、リハビリなどの治療を進めると良いでしょう。

半月板損傷になってしまったのですが、運動をしてもよいですか?

半月板を損傷して間もない場合(急性期)では、原則運動は行わないことをお勧めします。急性期は出血や炎症が起こっていることが多く、運動によって治癒が遅くなってしまう可能性があります。急性期ではない場合でも、運動中、運動後に痛みが出るものは基本的にNGとなります。水中での運動野自転車等は比較的半月板への負担は小さいとされていますが、損傷の程度や時期によっては、やはり勧められないこともあります。

半月板損傷では、回復の程度に合わせて段階的に運動を許可していきます。安易に自己判断することなく、医師や理学療法士の指示に従って、運動を行いましょう。

半月板断裂と半月板損傷の違いは?

半月板断裂と半月板損傷は、厳密に区別されてはおらず、ほとんど同じ意味として使用されています。日本整形外科学会では主に半月板損傷と言う言葉を使用しています。半月板に起こっているダメージの程度によって、半月板が軽度に傷ついているものを半月板損傷、完全に裂けていたりする状態を半月板断裂と呼び分けることもありますが、基本的には全て「半月板損傷」と呼んで差し支えないでしょう。

半月板損傷は一生治らないと聞いたのですが・・・

半月板の一部は血流が乏しく、その部分を損傷してしまうと自然治癒が見込めないことが多いため、半月板損傷は治らないと言われることがあるようです。症状が消失することを「治る」とするのか、半月板が損傷前の状態に完全に元通りになることを「治る」とするのかによっても回答は異なりますが、半月板損傷が必ずしも「一生治らない」というわけではありません。

損傷の程度や個人の回復力によって異なりますが、適切な治療とリハビリを行えば、多くの場合、症状が軽減し日常生活に支障がなくなるまで回復することが可能です。軽度の損傷であれば保存療法やリハビリで改善が見込めますし、手術が必要な場合でも、関節鏡を用いた手術や半月板の部分修復により、痛みや機能の回復が期待できます。医師と相談しながら最適な治療法を選ぶことで、膝の健康を維持しながら生活することが可能です。

半月板損傷で起こる「膝のロッキング」とは何ですか?予防するためには?

「膝のロッキング」とは、突然膝がロックされたように曲げ伸ばしが出来なくなる現象です。半月板が損傷している場合などに、膝関節内で半月板組織が骨の間に挟まったり、関節のスムーズな動きが制限されることで起こるとされています。

膝のロッキングは強い痛みを伴い、歩くことが困難になるなど日常生活に大きな支障をきたします。整形外科では局所麻酔薬を注射してロッキングを解除する治療を行いますが、根本的な原因が半月板損傷にある場合は、繰り返す可能性もありますので手術を検討します。自然にひっかかりが外れてまた動くようになることもありますが、関節内が傷ついている可能性もあるため、医療機関を受診する方が良いでしょう。

ロッキングを予防するためには、急な動作を避けることが大切です。半月板損傷の診断を受けている方や、膝の引っかかり感を日常的に感じている方などはロッキングが起こりやすいと考えられますので要注意です。パっと急に動くことを避け、膝を保護する意識を持ちましょう。

また、サポーターを使用することでロッキングが起こりにくくなると言われる方もいらっしゃいますが、これには個人差があります。

半月板損傷の治療に、ヒアルロン酸の注射が良いと聞きましたが・・・

ヒアルロン酸注射は膝に限らず、関節の痛みを軽減するために行われる治療法です。ヒアルロン酸は、強い保水性を持った成分で、これを関節に注射することにより、関節内に多くの水分を留めて関節の動きをスムーズにする作用を持ちます。

決して半月板損傷そのものを治すことはできませんが、膝関節の動きを滑らかにし、痛みの緩和が期待できます。

ヒアルロン酸注射は保存療法の一環として行われ、比較的軽度の損傷や、手術を行うまでではない場合に用いられることが多い治療法です。「注射は癖になるから」と、忌避される患者様もいらっしゃいますが、巷で言われるような依存性はありませんので安心して治療を受けましょう。

半月板損傷は自然治癒しますか?

半月板損傷は、筋肉の怪我などに比べ自然治癒が難しいとされています。半月板には血流が少なく、体の他の組織と比べて自然に修復される能力が低いためです。特に血流がほとんどない内側の部分が損傷した場合、自然に治癒することはほぼ期待できません。

軽度の損傷であれば、保存療法(安静、冷却、リハビリなど)で症状が改善することもありますが、半月板組織が元通りになっているわけではありませんので、何かのきっかけで症状が再燃することが考えられます。

半月板損傷の手術治療について教えてください

半月板損傷に対する手術治療は、「半月板縫合術」と「半月板切除術」の二つに分けられ、それぞれの手術が、損傷の範囲や程度、症状に応じて適用されます。

半月板縫合術は、縫い合わせることが可能で、自然治癒が見込める部位に対して行われます。関節鏡と呼ばれる小型カメラ(内視鏡)を用いて損傷し、裂け(剥がれ)ている部分を縫い合わせます。半月板を残すことができるのがメリットです。縫い合わせた部位が自然治癒するまでに時間を要することから、日常生活に完全復帰するまでに3~6か月程度かかることがあります。

一方、半月板切除術は、自然治癒が見込めない部位や縫い合わせることが困難な損傷に対して行われます。こちらも関節鏡を用いて行われ、損傷部位やささくれ立った表面を、切除し、滑らかに整えます。半月板を一部切り取ってしまうことから、長期的には膝の変形等が起こってくる可能性があるとされています。

半月板損傷ではサポーターをつけた方が良いですか?どのようなサポーターが効果的ですか?

半月板損傷では、サポーターを処方されることがあります。サポーターの装着によって膝の安定性を高め、膝への負担を軽減するほか、保温効果も期待できます。不安定感やガクガクとした感じを訴えられる方では効果を感じられることが多い一方で、サポーターをつけても特に変化を感じられない方も一定数いらっしゃいます。

伸縮性や締め付けの強さ、支柱の入ったものなど多くの種類がありますが、個人のライフスタイル等によっても適応が異なってきますので、一概にどんなサポーターが良いとは言えません。サポーターを検討する際は、医療機関で相談をしてみると良いでしょう。

半月板損傷に再生医療、幹細胞治療は効果的でしょうか?

半月板損傷に対する再生医療、特に幹細胞治療は、近年注目されている新しい治療法です。幹細胞治療では、幹細胞と呼ばれる組織の修復や再生に関わる細胞を損傷部位に注入し、自然回復を促します。幹細胞治療は、従来の手術では修復が難しい重度の損傷や、繰り返しの損傷に対しても治療効果が期待されています。幹細胞が軟骨組織を修復し、半月板の一部を再生する可能性があることから、今後の発展により更に多くの患者に適用できるようになると考えられています。しかし、現段階では、治療効果の個人差や長期的な効果についてはまだ十分に確立されておらず、研究が進められているものです。

再生医療の適応が可能かどうかについては、医療機関での検査や医師の診断を受けたうえで判断されます。当院では、通常の保存療法では改善しないものの、手術を受けるほどではない患者様に選ばれることが多く、また手術と併用することもあります。

ヘルニアなど腰痛・しびれについてのお問い合わせ・診療予約

あいちせぼね病院
東京腰痛クリニック
あいちせぼね病院 TEL 0568-20-9100
東京腰痛クリニック TEL 03-5537-3885

執筆

伊藤 不二夫

医師 伊藤 不二夫

プロフィール

医療法人 全医会
あいちせぼね病院 理事長

日本整形外科学会専門医
医学博士
(名古屋大学 医学部卒・大学院修了)

伊藤 全哉

医師 伊藤 全哉

プロフィール

医療法人 全医会
あいちせぼね病院 院長

日本整形外科学会専門医
医学博士
日体協公認スポーツドクター
(名古屋大学 医学部卒・大学院修了)

三浦 恭志

医師 三浦 恭志

プロフィール

医療法人 全医会
東京腰痛クリニック 院長

日本整形外科学会専門医
医学博士
(名古屋大学 医学部卒・大学院修了)

企画:河重 俊一郎
(あいちせぼね病院 理学療法士)

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