外来案内:リハビリテーション

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コラム | 長引く痛みが日常生活・スポーツに与える影響

小さな痛みを抱えながら活動している人々

私は理学療法士として病院で働きながら、高校生の部活動にも関わっていますが、そこで日々感じるのは、「多くの人が小さな痛みを抱えながら生活している」ということです。

痛みが我慢できる程度だから、また、仕事・部活などが忙しく小さな痛みに構っていられないからなど、そこには様々な背景があると思いますが、「我慢できるから」「忙しいから」といって放って置かないで病院で診てもらうことをお勧めします。

痛みの日常生活・スポーツ動作への影響

たとえ我慢できる程度の小さな痛みであっても、日常生活やスポーツに悪影響を及ぼしてしまうことがあります。例えば腰を曲げる動きなど、ある動作を行う際にいつも痛みを感じていると、無意識に筋肉の働きなどを制御するようになり、その痛みに適応した体の動かし方をとるようになります。いわゆる《癖》や《かばう》と言われる状態と考えてもいいでしょう。無意識な変化ですので、当人はもちろん気づきません。ある関節の痛みをかばって生活をしていると、他の関節が痛くなってくるかもしれませんし、スポーツにおいてはパフォーマンスが下がってしまうかもしれません。

これが長引く痛みが日々の活動に悪影響を及ぼす仕組みです。

《癖》の作られ方

ではそのような《癖》はどのように作られるのでしょうか。ある人が『上の物を取ろう』と思い立った時、特に何もなければ普段通りの動き方でその動作を実行します.こういった一連の動き方を運動戦略と呼びます。

しかし、動くと腰が痛い時はどうでしょうか。ある動作を行う際、脳に『腰が痛い』という情報が入ると,脳は普段通りの運動戦略(運動戦略a)で動作を行うと腰痛を生じるため、なんとか痛みを感じなくて済む動かし方(運動戦略b)で動作を行おうとします。痛みが続く限り、その人は常に運動戦略bを使って物を取ろうとしますから、脳はこう正常ではない運動戦略bを第1選択として動作を行うように学習します。こうしてその人特有の《癖》が作られてきます。

《癖》の作られ方

普段通りの動かし方はどう作られる

では、普段通りの動かし方(運動戦略a)はどのように作られているのでしょうか。これは、赤ちゃんの時に様々な刺激を経験し成長する過程で、脳が学習して作られていきます。そのため、成長の過程で自動的に作られる動き方になります。

痛みが無くなる≒《癖》も治る?

痛みが無くなれば元の運動戦略に戻るかと言えばそうとは限りません。痛みが長引くことで使われなくなった正常な動き方である運動戦略aを忘れてしまうことがあります。痛みを感じている期間が短ければ、元の運動戦略に戻すことも簡単ですが、長引く痛みではなかなかそうもいかないのです。

例えば、スポーツでケガから復帰した選手が、ケガは完治しているにもかかわらず元のパフォーマンスを発揮できなくなることがありますね。多くの選手が努力すれば戻せると考えていることも悪循環の1つです。スポーツ動作までいかなくても、足首を捻挫した後の歩き方や、腰を痛めたことがある人の屈み方など、何気ない動作にもそういったことが隠れています。

痛みが無くなる≒《癖》も治る?

こういった場合に痛みが無かった時の運動戦略を取り戻すためリハビリで行っているのが、機能的エクササイズなどと呼ばれる運動です。

《癖》による悪影響

運動パターンの変化で体の軸(重心)が偏ります。この場合、偏った側の負担が増え、反対側の負担が減ります。そうなると頑張りすぎる筋肉(努力筋)とサボる筋肉(サボり筋)が作られます。

期間が長引くとサボり筋の存在を忘れることもあります。逆に努力筋は使われやすくなり疲労が溜まる一方です。肩こりがこの代表例ですね。

動きは脳でコントロールされている

人は動く時には何かしらの目的を持って行動します。その目的を達成するため脳が筋肉に指令を出して関節を動かし行動します。つまり、人の動き(運動戦略)は自分の脳の表現なのです。

例えば上の物を取る時に、『どの筋肉に力を入れる』などを脳が選択して行動します.この一連の流れも無意識な行動です。

つまり、動きは脳が無意識に選択しているため、《癖》を治すには機能的エクササイズを行い脳の無意識な選択を変える必要があります。

反復動作と痛みの関係

スポーツや仕事・家事などの反復動作で痛みを生じてしまうことがあります。

同じ動作を反復して行うと、同じ部位に負担をかけ続けます。耐えられる限界量(キャパシティー)を超えてしまった時に、《疲労》や《痛み》が生じます。疲労を溜め続けると疲労骨折や腰椎分離症、筋肉の炎症などを引き起こしてしまいます。

反復動作と痛みの関係

疲労を軽減させる方法

では、疲労を生じてきたらどう対応しましょう。

  1. ストレッチ・マッサージ:日々行うことで、疲れを癒す
  2. 筋力トレーニング:筋力や筋持久力が上がり、限界容量(キャパシティー)が増える
  3. 機能的エクササイズ:体にかかる負担を最小限にする

など3つの方法が挙げられます。
「1」「2」も大事ですが、私が優先しているのは「3」の機能的エクササイズです。

機能的エクササイズで《癖》を治すことで、筋力トレーニングやストレッチの効果を最大限にすることができます。つまり、機能的エクササイズ後に筋力トレーニングやストレッチをすることをお勧めします。

まとめ

我慢できる程度の痛みであっても、多くの悪循環を作っています。

自分の体の状態を知ることは日々の生活の疲れが減ります。スポーツをしている人は自分の体を最大限使うことができるようになります。 日々の生活をより良いものにするため、スポーツで活躍するために痛みがある時には自分の体を見つめなおしてみましょう。

あいちせぼね病院
リハビリテーション部 理学療法士
山本剛史

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