教えて!先生!腰痛の専門医による安心アドバイス 監修:腰痛・ヘルニアの専門医療機関 あいちせぼね病院 理事長 伊藤不二夫

ぎっくり腰

質問と回答

ぎっくり腰って何?

重い物を持った拍子に突然腰が痛くなり動けなくなってしまう。そんな恐ろしいぎっくり腰、正式には急性腰痛と言います。

読んで字の如く急激に発症した腰痛を指し、欧米ではその激しい痛みから「魔女の一撃」とも呼ばれます。

多くは一週間~二週間程度で自然に回復していきますが、時間経過によって改善が見られない、または下半身に痛みやしびれと言った症状が出現した場合などは椎間板ヘルニアなどの病気が隠れていることがありますので要注意です。

ぎっくり腰には、なんでなるの?

患者さんから最も多く聞かれるのは、「重い物を持ち上げた時」に発症するケースですが、「少しお辞儀をしただけ」「ただ立ち上がろうとしただけ」など、 ぎっくり腰が起こる状況は多岐に渡ります。

ぎっくり腰になった時に身体の中では何が起こっているのかは、実ははっきりとしたことは未だ分かっていません。椎間板ヘルニアや圧迫骨折などの病気による痛みをただのぎっくり腰と思って放置したり、整体院などで施術を受けて悪化してしまうこともありますので、まずは整形外科の医師に診てもらうことをお勧めします。

ぎっくり腰になった時、体操やストレッチをやってもいいの?

ぎっくり腰になった時の体操やストレッチの可否については、非常に聞かれることの多い質問です。しかし、症状やお体の状態によってケースバイケースですので、一般的なことを簡単に説明させていただきます。

実は、発症して間もない腰痛に対しては、「ストレッチや体操を行った場合」と「行わなかった場合」にはあまり差がないと言われています。逆に、ストレッチを行ったからといって悪くなるというものでもないので、例えばストレッチをした時に、気持ちがいい、楽になるという場合は、ストレッチをしていただくのは構わないと思います。しかし、ストレッチをした時に、痛みを感じたり、ストレッチ後に痛みが余計に強くなる場合には、控えていただくなど判断してください。

腰痛が発症してから4週間ぐらい経って、症状が落ち着いた頃からは、段階的に体操やストレッチを行うのは効果があると言われています。しかし、どんな体操がいいのかはケースバイケースですので、できれば、理学療法士のようなビリテーションに携わるスタッフに聞いていただけると安心です。

以下の 動画でもわかりやすく説明していますのでぜひご覧ください。

ぎっくり腰は安静にした方が良い?

ぎっくり腰は痛みが強いのでついつい横になって休んでしまうことが多いですが、できるだけ安静にしない方が早く治ると言われています。

たくさんの研究がありますが、「ぎっくり腰になった時に安静にしていたグループと、できるだけ普段通りの生活をしていたグループを比べると、痛いながらも普段通りの生活を心がけたグループの方が良くなることが多かった」ということが分かっています。

お体の状態は様々ですので、安静が絶対に悪いというわけではありませんが、痛いながらも、できるだけやれる事をやるということが、改善の近道になりそうです。いつもの家事を少しずつやってみたり、職場の理解が得られるなら、重いものを持ったりすることは避けて軽い仕事から復帰してみたり。こういったことを心がけることで、結果的に早く良くなるということが言えると思います。

もちろん痛くて全く動けないという状況で無理に動く必要はありませんし、もしかしたら椎間板ヘルニアなどの病気が潜んでいる可能性もあります。心配な症状がある場合は早めに整形外科を受診することをお勧めしています。

ぎっくり腰になったらどうしたらいいの?(1)

イギリスの医学誌に掲載された研究に、ぎっくり腰をした患者さんを、
①「ベッドでの安静」
②「治療家による施術を受ける」
③「できる限り通常の日常生活を過ごす」
という3グループに分けて経過を追ったものがあります。

その結果、③の「できる限り通常の日常生活を過ごす」よう心掛けたグループが最も回復が早く、①の「ベッドでの安静」を行ったグループが最も回復が遅かったという意外な結果となりました。

他の研究を見ても、動けないほどの激痛である場合を除き、安静にしていることは症状を長引かせることがほとんどのようです。

ぎっくり腰になったらどうしたらいいの?(2)

前述の通り、ぎっくり腰の早期回復には普段通りの生活を心掛ける必要があります。楽になるようなら湿布や痛み止めなどを使っても構いませんし、痛みを我慢してまで行う必要はありませんが、軽いストレッチなどを行うのも悪くはないでしょう。温めたり冷やしたりは、より楽になる方を選んでいただければ間違いありません。

ただ、怖いのは椎間板ヘルニアや圧迫骨折などの病気が潜んでいる場合です。あまりに痛みが強い場合や症状の改善が見られない場合などは、自己判断を避け、整形外科の医師を受診することをお勧めします。

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ぎっくり腰に効果のあるストレッチや体操はありますか?

これまでに述べた通り、ぎっくり腰はできるだけ活動性を落とさないような生活を心がけていると改善していくことがほとんどです。

痛みを我慢して無理に体操等を行わなくても大丈夫ですが、ある程度動けるようになってきたら、以下の体操などに取り組んでみると良いかもしれません。

キャットキャメル

くれぐれも、痛みを強くしない範囲で行うようにしてください。

定期的にぎっくり腰を繰り返しています。ぎっくり腰を予防のために出来ることはありますか?

前述の通り、ぎっくり腰になった時に身体の中で何が起こっているのかは、実ははっきりとしたことは分かっていません。ぎっくり腰になる原因もさまざまですので一概に「これで予防が出来る」とは言えませんが、腰に普段とは異なる負担をかけないことが大切だと考えています。

あくまで経験則ですが、以下のような場合にぎっくり腰を発症しやすい印象があります。

①長時間同じ姿勢でいた後の動きはじめ
長時間同じ姿勢でいた後は、筋肉が上手く働かなかったり、関節が固まってしまったりすることがわかっています。長時間車を運転していたあとや、朝起きてすぐ、デスクワークの後など、瞬発的に体を動かしたりするとぎっくり腰を発症しやすいと言えるでしょう。

②睡眠不足や疲れが溜まっている時
人間の身体は睡眠不足や疲れが溜まっている状態では本来の動き方とは異なったパターンで体を動かすようになることがわかっています。そんな時に腰を曲げる動きなどをすると、腰に負担がかかりぎっくり腰を発症しやすくなります。

③運動不足
筋肉や関節を大きく動かす機会がほとんど無く、身体を上手く動かせない場合には、ふとした時にぎっくり腰になってしまうことが多いように思います。日頃から背骨に「曲げる・反らす・捻る」という動きをさせてあげることで予防することが出来るかもしれません。一日一回、ラジオ体操などを行うのがお勧めです。

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ぎっくり腰になった時、コルセットはつけた方が良いの?

たしかにぎっくり腰になった際、コルセットをつけると楽に動けるという方は多いです。先述の通り、ぎっくり腰の早期回復のためには、できる限り普段通りの生活を心掛けることが重要ですから、コルセットで楽になり、普段通りの生活が行えるのであれば、有用であると言えます。

「コルセットをつけていると筋肉が落ちてしまうのでは」と心配する方もいますが、寝たきりにでもなっていない限り、コルセットの装着が直接大きな筋力の低下につながることは考え難いです。ただ、長い目で見ると、身体の使い方が下手になったり、筋肉を上手く使うことができなくなることで、二次的に筋力の低下を招いてしまう事は考えられます。

コルセットをつけないで無理に我慢して痛みを長引かせたり、活動性が下がったりすることの弊害の方が大きいとは思われますが、コルセットに頼らずに済むのであればそれに越したことはありません。痛みと相談しながら徐々に外していくのが良いでしょう。

ぎっくり腰を予防するためにはどうしたらいいの?

ぎっくり腰の原因は前述の通りはっきりしておらず、様々な状況で発症します。したがって有効な予防法も一概には言えませんが、日頃から動き方や姿勢に気を付けたり、十分な筋力や柔軟性を保つことが重要だと思います。

具体的には、床の物を拾う際には腰を曲げるのではなく、膝を曲げて腰を落として拾う。持ち挙げた重い物に負けてせぼねが曲がってしまわないよう、腹筋や背筋を十分に鍛える。股関節を柔らかくし、腰の負担を分散させる、などです。

ぎっくり腰になってしまいましたが、自分でできる応急処置はないでしょうか?

ぎっくり腰の大半は数日~数週間で症状が落ち着いてきますが、発症直後の脂汗をかくような痛みは耐え難いものです。

もしぎっくり腰になってしまった時はむやみに動かず、まずは最も楽な姿勢でゆっくりと深呼吸を繰り返しましょう。しばらく繰り返していると、それだけで痛みが落ち着いてくることがあります。もし少し動けるようになったら今度はゆっくりと正座をし、ここでも深呼吸を繰り返します。個人差はありますが、過度に緊張した筋肉が緩み、楽になることがあります。

ただし、この方法が有効なのは骨や神経などに異常がない場合のみです。もし足のしびれや爪先が動かないなどの症状が出現した場合は、神経の障害が強く疑われます。できるだけ早く病院にかかりましょう。

ぎっくり腰になってしまいました。マッサージなどはしても良いのでしょうか?

デスクワークや重い物を持って酷使した腰へのマッサージはとても気持ちが良いもので、整体やマッサージ屋さんで施術を受ける方も非常に多く見られます。

ぎっくり腰の原因は筋肉や神経、椎間板など様々で、それぞれに適した治療を行わなければ、効果がないばかりか、痛みを悪化させてしまう事もあります。

ではマッサージが効果を発揮するのはどのような時でしょうか。マッサージには筋肉の緊張を緩め、循環を良くする効果がありますから、筋肉が過度に緊張して痛みを出している場合や、筋肉の緊張によりせぼねの動きが悪くなってしまっている場合などに有効といえます。

ただ、痛みの原因を自己判断するのは難しく、残念なことに施術者の腕も「ピンキリ」です。安全面を考えればやはり、まずは医療機関にかかって原因を見つけてもらうのが良いように思います。そこで骨や神経に異常が無いことがわかれば、医師の判断を仰ぎマッサージを試してみるのも良いかもしれません。

ぎっくり腰になり、仰向けに寝られません。ラクな寝方はないでしょうか?

ぎっくり腰の方の大半は仰向けで脚を伸ばして寝るのが困難です。これは筋肉や骨の構造上、仰向けになり脚を伸ばすと腰に力が集中してしまうためです。

仰向けで寝ると痛い、また、起き抜けの症状が強い場合は、膝の下に丸めた毛布などを置き、膝が90°程度曲がった状態で寝るのが良いでしょう。また、痛い方を上にして横向きになり、抱き枕などを抱いて寝るのもオススメです。

ぎっくり腰になってしまいましたが、お風呂は入っても良いのでしょうか?

「湯治」という言葉があるように、お風呂に入ることは様々な身体の不調を改善してくれます。前述の通りぎっくり腰には様々な原因があり、一概にお風呂が良いとも悪いとも言えませんが、温かいお湯にゆっくり浸かることでいくらか痛みが楽になる方が多いように思います。

循環の改善や、浮力によって腰の負担が減ること、リラックス効果で自律神経が整うことなどがその理由として考えられますが、稀にお風呂に入ることで痛みが強くなる方もいらっしゃいます。「腫れがある」、「患部が熱を持っている」場合などは入浴を避けたほうが良いでしょう。

ぎっくり腰になった時は病院に行った方が良いのでしょうか?これまでは数日で治ってしまっていたため、病院に行ったことはありません。

ぎっくり腰の大半は数日~数週間で症状が落ち着いてきますが、これを何度も繰り返す方がいらっしゃいます。多くは生活習慣や疲労、姿勢、仕事内容などによるものですが、繰り返すぎっくり腰の影には椎間板ヘルニアをはじめとした、せぼねの病が隠れていることがあります。

ぎっくり腰を何度も繰り返している方は、一度医療機関を受診して原因を探ってもらう方が安心でしょう。

詳細はこちらの動画「腰痛になってしまいました。病院にかかった方が良いの?」で説明しています

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過去に何度かぎっくり腰をしています。最近、軽いぎっくり腰のような、なりかけのような違和感がありますが、どうしたらよいでしょうか?。

過去にぎっくり腰になったことのある方の中には、ぎっくり腰の「前兆」のようなものを感じ取る方がいらっしゃいます。

ぎっくり腰に限らず、もし腰が痛くなりそうだと感じた時は、生活習慣を見直してみるのがオススメです。姿勢に気を付ける、しっかり睡眠を取る、寝る前にストレッチをする、毎日10分だけでもウォーキングをしてみる、などです。ぎっくり腰は日々の生活の負担が積み重なり発症することも多く、生活習慣を見直すだけでも思いのほか予防することができるものです。

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強い腰痛があり病院にかかりましたが、レントゲン検査に異常は無く、「軽いぎっくり腰」と言われ湿布を処方されただけでした。本当に大丈夫でしょうか?

前述の通り、ぎっくり腰の大半は数日~数週間で症状が落ち着いてきますから、あまり不安に思う必要はありません。

ただ、一般に医療機関で多く行われるレントゲン検査だけでは、神経や椎間板などの肝心な組織の状態はわかりません。心配であればMRIやCTなど、精密な検査が可能な医療機関を受診するのも一つの手です。また、下半身に痛みやしびれが出現したり、症状が日に日に強くなる場合などは神経の障害が疑われるため要注意です。

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東京腰痛クリニック
あいちせぼね病院 TEL 0568-20-9100
東京腰痛クリニック TEL 03-5537-3885

監修

伊藤 不二夫

医師 伊藤 不二夫

プロフィール

医療法人 全医会
あいちせぼね病院 理事長

日本整形外科学会専門医
医学博士
(名古屋大学 医学部卒・大学院修了)

伊藤 全哉

医師 伊藤 全哉

プロフィール

医療法人 全医会
あいちせぼね病院 院長

日本整形外科学会専門医
医学博士
日体協公認スポーツドクター
(名古屋大学 医学部卒・大学院修了)

三浦 恭志

医師 三浦 恭志

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東京腰痛クリニック 院長

日本整形外科学会専門医
医学博士
(名古屋大学 医学部卒・大学院修了)

企画:河重 俊一郎
(あいちせぼね病院 理学療法士)

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