膝の靱帯損傷の手術後のリハビリについて

靭帯損傷(断裂)手術後のリハビリ

手術によって再建された靭帯は非常に脆く、無理をするとせっかく手術した靭帯が再度断裂してしまうことがあります。

そのため、手術後はリハビリによって段階的に膝の機能を取り戻し、徐々に元の生活やスポーツに復帰することができるよう努めます。

靭帯損傷の手術後は多くの場合、入院中の2~3週間のリハビリに加えて、半年から一年間の外来通院リハビリが必要となります。
スポーツへの復帰は術後半年以降から段階的に行われますが、完全復帰には1年程度の期間を要するのが一般的です。

術後リハビリの大まかな内容

※以下は前十字靭帯損傷の一例です。他の靭帯の手術や、半月板を同時に手術するような重症例などでは下記の限りではありません。リハビリ内容や競技復帰は手術内容や回復の度合いによって大きく時期が前後します。

術後早期(入院中)

術後早期は組織の回復が最優先となります。
術後1週間程度は膝を大きく曲げ伸ばししたり、全体重をかけたりすることができませんので、松葉杖や装具を使用し、患部へ負担をかけないような動きかたを習得します。
また、術後は炎症が強く起こっていることから、アイシングによって炎症を押さえます。
足を動かさないために抹消の循環が悪くなるため、足首や足の指を積極的に動かすようにします。患部以外の運動機能を低下させないように、手術部位以外の運動を適宜行います。
術後1週間を過ぎたころから状態に応じて、体重をかけたり膝を動かすことができるようになります。

装具 ロフストランド 膝

退院後のリハビリ

ほとんどの場合、退院するころには松葉杖を使用することなく、装具のみで歩くことが可能です。週1~2回程度の通院と自宅でのリハビリによって徐々に膝関節の動きや筋力を取り戻していきます。ここからは膝の可動域拡大と筋力訓練がリハビリの主となりますが、この時期は再建した靭帯の耐久性が非常に低いため、強い負荷や無理な動きはまだまだ避ける必要があります。

可動域拡大のためには、膝の曲げ伸ばしや、創部の癒着を防ぐためのマッサージなどを行います。筋力訓練では寝転がった状態や座った姿勢でのトレーニングに始まり、術後6週間程度からエアロバイクやスクワット、ステップ動作などへと段階的に進みます。
特に膝の傷害では大腿四頭筋といわれる太腿の筋肉が重要とされていますが、体幹や股関節、足首など、患部以外のトレーニングも合わせて行う必要があります。

術後2カ月が過ぎると、早歩きや片脚スクワット、階段昇降訓練といった、より複雑で負荷の強い運動を取り入れ、術後3カ月が過ぎる頃にはごく軽いジョギングができるようになっていきます。

術後3~4か月程度で再建した靭帯の耐久性が安定してきますので、術後5カ月頃になると方向転換やジャンプ動作の練習に進み、6か月程度から、回復状態に応じてダッシュやブレーキといったスポーツに必要な能力を訓練していくことになります。

実際のスポーツ練習は多くの場合7~8カ月程度から徐々に開始し、スポーツへの完全復帰は術後1年程度が目安です。(競技内容によって大きく異なります)。

術前リハビリ

術後の回復をスムーズにするために、可能であれば術前からリハビリに取り組むことが望ましいと言われています。手術前の膝関節の機能(可動域や筋力)が良いほど、術後の経過が良いことが報告されている他、股関節や足首などの機能を低下させないことも重要です。
また、松葉杖の使用や、術後の動き方を習得しておくことで、術後のリハビリをスムーズに導入することができます。