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脊柱管狭窄症とは

脊柱管狭窄症とは

脊柱管狭窄症はその名の通り、脊柱管という背骨の中にある神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫される病気です。

脊柱管狭窄症

中高年男性に多い脊柱管狭窄症は、神経をおさめている脊柱管の内面が、前からは椎間板・椎体後縁骨棘の突出、後ろからは黄色靭帯の肥厚、横からは椎間関節の棘で狭くなった状態を指します。
椎間板ヘルニアのなれの果ての状態と言えます。

また脊椎すべり症(上下の背骨がずれ)で、脊柱管が狭くなった場合にもありえます。
神経および神経周辺の血管も圧迫されるため、脊柱管内で上下の自由移動ができず、数百m、数十m歩くと痛みやしびれで立ち止まり、休憩しなければ次の歩が進まない間歇跛行(かんけつはこう)が生じてきます。しゃがんだり、前屈すると血管や神経の首絞め状態が開放されるため、再びしばし動けるようになります。

初期から中軽度の場合は、脊柱管内に仙骨ブロック等を定期的に行い、神経周辺を滑りやすくしてやると、歩行距離が延び坐骨神経痛も緩和してきます。
繰り返しのブロック注射でも痛みが治まらない場合は、経皮的内視鏡下脊柱管拡大術(PEL)もしくは内視鏡下脊柱管拡大術(MEL)が必要となってきます。

64マルチスライスCTより正常椎間孔L3/4を示す。1分寝ているだけでこうした状況が映像として見ることができます。

椎間孔狭窄がL4/5にあり、L4椎体後縁骨棘により神経が圧迫される。

正常で広い脊柱管の中で神経は自由に動くことができる

脊柱管狭窄のため、神経は強く圧迫され自由に動くことができない。椎間板の突出(前方)・椎間関節肥大変形(側方)・黄靭帯肥厚変性(後方~後側方)が見られます。

脊柱管狭窄症の本態は、椎間孔と脊柱管の狭窄によります。椎間板膨隆・椎間関節肥大化・黄靭帯肥厚は脊柱の伸展(そり)で増強し、屈曲(かがみ)で軽減します。

脊柱管狭窄症の症状

お尻から太ももの裏、ふくらはぎや足にかけて痛みやしびれ、重だるさを訴えることが非常に多い病気です。重症でない場合、腰痛は軽度であることが多いのも特徴の一つです。

歩いていると前述の症状が出現してきますが、しばらく座ったり屈んだりしていると改善してまた歩けるようになるという症状が代表的です(間欠跛行)。

シルバーカーやショッピングカートを押していると楽に歩けるのが特徴で、寝ていたり、座っていると症状は出現せず、自転車に乗ることなども問題なく出来ますが、真っすぐ立っているのには苦痛を伴います。

立位や歩行により坐骨神経痛やしびれが増強

座ったり、しゃがんだりすると楽になる

カート等で前傾すれば歩くのが楽である

立位で背骨を伸ばすと、脊柱管が狭くなり神経を圧迫します。
前方では椎間板の膨隆が増大し、側面では椎間孔が狭小化し、後方~後側方では黄靭帯が弛緩増大化することによります

前傾や座位姿勢で、脊柱管は広くなり、神経の圧迫がとれてきます。
前方の椎間板線維輪が緊張し、側面では椎間孔が拡大し、後方・後側方では黄靭帯が伸張されることで神経の圧迫が解除されるからです

椎間板の突出(前方)・椎間関節肥大変形(側方)・黄靭帯肥厚変性(後方~後側方)で脊柱管が狭くなることで、全周から神経が圧迫されます

脊柱管狭窄症の原因と予防

脊柱管が狭くなる原因は様々ですが、多くは加齢に伴う骨や靭帯の変性・変形が原因です。椎間板ヘルニアや脊椎すべり症、骨折などに続発する場合や、先天的に脊柱管が狭いことなども関連していると言われています。

靭帯や椎間板、骨の変性(劣化)は悪い姿勢や重いものを持つ仕事、激しいスポーツなど様々なことが原因になると推測されていますが、直接の関連ははっきりとはわかっていません。遺伝的に背骨の変性が起こりやすい体質などもあるようです。

それらのことから「○○に気を付けていれば脊柱管狭窄症が予防できる」というのもハッキリとは言えないのが現状です。

脊柱管狭窄症の検査

脊柱管狭窄症の診断はレントゲンだけでは難しく、MRIやCTなどの検査が必要となります。MRIは神経や椎間板などの柔らかく水分を含んだ組織を詳細に写し出し、CTでは骨が飛び出すことによる狭窄などを確かめることができます。

確定診断のために、神経根ブロック(神経のそばまで針を進めて行うブロック注射)や造影検査(造影剤を注射する検査)などの検査を追加して行うこともあります。脊柱管狭窄症は画像の結果と症状が一致しないことも多く、注意して診断を行う必要があります。

また、閉塞性動脈硬化症などと言った血管の病気によって脊柱管狭窄症に似た症状が出現することもあるため、その鑑別のために血管の検査を行うこともあります。

脊柱管狭窄症の治療

画像検査の結果や症状の強さによって異なりますが、まずは保存療法(手術以外の治療)を行います。痛み止めや血液の循環を良くする薬、ブロック注射、リハビリなどによって症状の緩和を図ります。

保存療法で効果が見られない場合や、症状が強く生活に大きな支障が出ている場合、足が動きにくかったり尿が出にくかったりなどの症状がある場合には手術療法を選択します。

ブロック注射

主に「仙骨部硬膜外ブロック」と呼ばれる注射を行います。尾骨(お尻の骨)付近から注射を行い、脊柱管内に薬液を流します。薬液の効果で痛みの信号をブロックすることからそのように呼ばれています。

痛みを抑える効果は永続的ではありませんが、神経の癒着をはがしたり、痛みを引き起こす物質を洗い流すことができることから、大幅な改善がみられることもあります。一度では効果が見られなくても、複数回行うのが一般的です。

薬による治療

ロキソニン®やボルタレン®、バファリン®、カロナール®といった一般的な鎮痛薬の他、リリカ®やサインバルタ®といった神経の薬、オパルモン®などの血流を改善する薬、痛みに効果がある抗うつ薬などが有効であると言われています。

手術による治療

手術を選択するかどうかの判断基準

保存療法(手術以外の治療)で効果が見られない場合、手術が検討されます。

日常生活に大きな支障が出るほどの症状がある場合や、足の動きが悪くなる・歩けなくなるといった症状が進行している場合などは放置しておくと後遺症が残存する可能性があるため、早期の手術適応と言えます。また、尿や便が出にくくなったり、漏れてしまったりする「膀胱直腸障害」と呼ばれる症状が出現した場合はできるだけ早く手術をすることが勧められています。

患っている期間が長いほど十分な改善が見られないという報告もあることから、あまり我慢しすぎるのも良くないかもしれません。もちろん症状の程度にもよりますので、手術の適応についてはご相談ください。

手術の目的と種類

脊柱管狭窄症に対しては、骨や靭帯などを切除して狭くなった脊柱管を広げる手術を行います。

PEL 8mm程度の切開で1~2泊の入院で脊柱管狭窄症の手術が可能です。
手術対象部位が1カ所のみで、骨の変形等が強度でない場合に行われます。
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MEL 10mm程度の切開で行う脊柱管を拡大する手術です。
複数個所の狭窄にも対応しており、2泊3日から手術を行うことができます。
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PE-LIF いわゆる「固定術」ですが、従来のものに比べ細いスクリューを用いて可能な限り小さな傷で行います。変性等が強い場合や、脊椎すべり症などに対して効果を発揮します。
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エピドラ 尾底骨部から1mmの内視鏡を挿入して、脊柱管内における神経周囲の癒着を剥離することが可能です。軽度の脊柱管狭窄症や、他の手術後に神経が癒着している場合などに行われます。入院期間は一泊です。
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手術後の経過

10日~2週間程度の入院となることが一般的です。

内視鏡を用いた手術では、1~2泊の入院で手術を行うことも可能となっています。

術後は4~6週程度コルセットを装着する必要がありますが、通常の日常生活や家事程度であれば大きな制限はありません。手術内容にもよりますが、腰を曲げたり反らしたりなどの動作を繰り返すような作業や重い物を持つ重労働などは6週間程度は避けていただく事がほとんどです。

※ボルトを入れて固定する手術の場合、安静期間を長めにとる必要があります。

体位変化にともなう脊柱管狭窄度の上昇

脊柱管内の圧力(Takahashi K,1995)
脊柱管内の圧力(Takahashi K,1995)

脊柱管狭窄症は体を真っ直ぐにしたり、反らしたりすることで、脊柱管内の圧力等が変化し症状が出現・悪化します。

真っ直ぐに立っていたり、歩いていると症状が出現し、カートにつかまって前傾したり、かがんで休むと楽になるのはそのためです。

症状にあった治療法を選択するために、脊椎専門ノウハウの結集である脊椎ドック(脊椎精密検査)をお勧めしております。

脊椎ドック(脊椎精密検査)のお勧め理由

  1. MRI・CT・レントゲンを同日撮影。すぐに脊椎専門医から結果説明を受けられる。
  2. 保険診療では数週間かかることが、半日で終了。
  3. 症状の原因を詳しく調べ、それによって適切な治療法を知ることができる。
  4. 大学病院教授陣で構成する「脊椎脊髄ドック協会」の推奨する検査法。

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予防と対策

予防方法

やってはいけないこと

脊柱管狭窄症では、腰を反らす動作を避けることが推奨されます。腰を反ると、構造的に脊柱管が狭くなってしまい、症状を悪化させる可能性があります。

「良い姿勢でいなければ…」と無理に背筋を伸ばしたり、背筋を鍛えようと身体を反らす運動を繰り返したりすることは、あまりお勧めできません。また、筋力が落ちるからと症状を我慢して無理にウォーキングをしたりするのも避けた方が良いでしょう。

脊柱管狭窄症の症状が悪化することは避けるのが原則です。脊柱管狭窄症以外の症状、例えば運動後に起こる筋肉痛などはあまり怖がる必要はありません。

やったほうがいこと

脊柱管狭窄症では、仰向けで両膝を抱え込んで背中を丸めるストレッチがお勧めです。脊柱管を拡げ、腰回りの筋肉を伸ばす効果があります。

腰をそらさない方が良いとは言え、丸めてばかりいるのも筋肉が硬くなってしまったりするデメリットがあるため、うつ伏せで腕を枕にして寝転がるなどの姿勢を2~3分取ることで、わずかに腰を反らす時間を作ると良いでしょう。症状が悪化しない範囲でウォーキングをしたり、自転車を漕ぐなどの症状が出にくい運動を行うことで、体力や足腰の筋力を落とさないよう努めることも大切です。

※椎間板ヘルニアの有無などによって症状の出方は異なるため、ストレッチや運動などで症状が出る場合は無理に行わないようにしましょう。

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